通院用のキャリーは、家で猫を入れるときより、診察室で猫を出すときに作りの差が出る道具です。
奥に踏ん張って出てこない猫を、前の小さな扉から引っぱり出すのは、猫にも人にも負担がかかります。
選ぶときは、次の3つを先に決めると、候補はかなり絞れます。
開け口:上と前の両方から開き、できれば上ぶたが外れる物
タイプ:移動の手段で決める(車ならハード、電車や徒歩ならソフトかリュック)
大きさ:中で猫が立って向きを変えられ、猫と合わせて持ち歩ける重さか
開け口は、入れる時と出す時で選ぶ
上から入れられると、嫌がる猫も入れやすい
前にしか扉がないキャリーだと、猫をお尻から押し込む形になりがちです。
キャリーを見て手足を突っ張る猫は、前からではなかなか入ってくれません。
上にも開け口がある物なら、抱っこしたまま上からそっと下ろすだけで入れられます。
入れるときに猫の体をひねらずに済むので、嫌がる猫ほど、上の開け口の有無で差が出ます。
上ぶたが外れると、診察台でそのまま診てもらえる
ハードキャリーには、上半分がまるごと外れる作りの物があります。
上半分を外せば、猫は下半分に入ったままの姿勢で診察を受けられ、中から引っぱり出す必要がありません。
こわがりの猫は、自分のにおいのする場所から出なくてよいだけでも、落ち着いていられることがあります。
外すときにネジやロックをいくつ外すのかは製品で違うので、診察室で手早く外せるかも見ておきたい所です。

前開きは、自分から出入りさせたいときに
前の扉は、猫が自分で歩いて出入りするときの開け口です。
ふだんから部屋に置いて寝床の1つにしておくなら、前の扉が大きく開く物のほうが出入りしやすくなります。
上と前の両方から開く物を選んでおけば、入れる時は上から、慣れてきたら前から、と使い分けられます。
ハード・ソフト・リュック・段ボールを比べる
| タイプ | 強み | 気になる所 |
|---|---|---|
| ハード | 形が崩れず、洗いやすい | 重く、かさばる |
| ソフト | 軽く、たためる | 形が崩れやすい |
| リュック | 両手が空く | 中の様子が見えない |
| 段ボール | すぐ用意できる | 破れやすく濡れに弱い |
ハードキャリーは、車での通院に
プラスチックでできた箱型で、形が崩れないので、中の猫が押しつぶされないのが強みです。
汚れたときに丸ごと水で洗いやすく、車の座席に置いてシートベルトを通せる作りの物もあります。
ふたの外し方やシートベルトの通し方は製品ごとに違うので、使う前に取扱説明書を読んでおいてください。
その代わり、本体だけでもそれなりの重さがあり、使わないときに置き場所を取ります。
車で通院する家や、上ぶたが外れる作りを重視する家に向いています。
前の扉は、金属の格子とプラスチックの板のどちらかが多く、格子の扉は中の猫の様子が見えやすく、風も通ります。
ふたと本体をつなぐ留め具が片側だけゆるんでいると、持ち上げた拍子にすき間が開いて猫が飛び出すことがあるので、留め具の数と閉まり方は買う前に写真で見ておいてください。
ソフトキャリーは、持ち歩く時間が長いときに
布やナイロンでできた、肩にかけて運べるタイプです。
軽くて、使わないときはたためる物が多いので、駅まで歩いたり、電車に乗ったりする家で使いやすくなります。
選ぶときは、底板がしっかりしていて、猫を入れても底が沈まない物を見ます。
爪や歯でメッシュを破られることがあるので、ファスナーに留め具が付いているか、網の目が丈夫かも見てください。

リュック型は、両手を空けたいときに
背中に背負うので、両手が空き、自転車を押したり、傘をさしたりしながら移動できます。
ただ、背中側にあると中の猫の様子が見えません。
途中で何度か下ろして、窓から猫の様子を見られるくらいの、時間に余裕のある移動に向いています。
まわりが見えすぎると落ち着かない猫もいるので、透明な窓にカバーを付けられる物だと、猫に合わせて調整できます。
段ボールは、急ぎの間に合わせに
段ボールのキャリーは、一時的な持ち運び用の箱で、急いで用意したいときの間に合わせになります。
雨にぬれたり、中で爪を立てられたりすると破れやすいので、通院のたびに使う物としては向いていません。
大きさ・重さ・運び方は、猫と人の両方に合わせる
キャリーの大きさは、猫の居心地と、運ぶ人の負担の両方で決まります。
大きさの目安は、中で猫が立って向きを変えられ、伏せて休める広さです。
大きすぎると、移動中の揺れで体が中で転がり、かえって落ち着かなくなります。
対応する体重や内寸は製品ごとに違うので、商品ページの対応する体重の表示と内寸を、猫の今の体重・体の大きさと比べ、子猫なら大人になったときの大きさも考えておきます。
もう一つ見落としやすいのが、キャリーと猫を足した重さです。
ハードキャリーは本体の重さもあるので、猫の体重と足して、家から病院まで片手で持って歩けるかを考えておきます。
2匹以上いる家でも、通院のときは1匹に1つずつキャリーを用意しておくと、狭い中でけんかになったり、病院で片方だけ出したいときに困ったりすることがなくなります。
中には使い慣れたタオルやペットシーツを敷き、底が拭ける物を選んでおくと、移動中に汚れたときも片づけが楽です。
災害時の避難に備えたキャリーの選び方は、通院用とは別の領域の話になります。
季節によって、窓と通気を見る
夏の移動は、キャリーの中に熱がこもりやすくなります。
メッシュの窓が多く、風が抜ける物だと、中の空気がよどみにくくなります。
冬は逆に、窓から風が入り込むので、窓を覆えるカバーや、上からかけられる布があると、猫の体が冷えにくくなります。
どちらの季節も、中に敷くタオルの厚さで調整できるので、1つのキャリーを通年で使えるように、敷く物を季節で替えるのが手軽です。
運ぶときは、揺らさず、水平に
取っ手を片手で持って歩くと、キャリーは歩くたびに前後に揺れ、中の猫は踏ん張り続けることになります。
できれば両手で底を支えるように抱えて、床と水平に保つと、猫が中で転がりにくくなります。
肩にかけるタイプは、ベルトを短めにして体にぴったり付けると、揺れが小さくなります。

電車・バス・車で使うとき
電車に猫を連れて乗るときは、多くの鉄道会社で、縦・横・高さの合計が120cm以内の容器に全身が収まっていること、猫と容器を合わせて10kg以内であることを条件にしています。
手回り品として料金がかかる会社もあり、細かな条件は会社ごとに違うので、乗る前に利用する鉄道会社の案内を読んでおいてください。
バス・タクシー・飛行機も、事業者ごとに決まりが違います。
キャリーを買う前に、よく使う交通機関の条件に収まる大きさかを見ておくと、買ってから乗れないと分かることがありません。
電車やバスの車内では、キャリーを座席の上に置かず、ひざの上か足もとに置きます。
電車やバスは、混み合う時間帯にキャリーが押されたり、まわりの音で猫がおびえたりしやすいので、通院の時間を選べるなら空いている時間に合わせると、猫も人も落ち着いて移動できます。
自動車では、キャリーを座席に置いてシートベルトで固定するか、助手席の足もとなど動かない場所に置く
運転中にキャリーを開けて、猫を車内に出さない
暑い時期も寒い時期も、猫をキャリーごと車の中に残して離れない
キャリーを嫌がる猫には、ふだんから出しておく
キャリーが届いたら、猫を入れる前に、すべての留め具が閉まるか、取っ手がぐらつかないか、扉の鍵がかかるかを、空のまま一度試しておきます。
キャリーが出てくると病院に連れていかれる、と覚えている猫は少なくありません。
通院の前の日に押し入れから出すのではなく、ふだんから部屋の中に置いておくと、キャリーが「いつもある物」に変わっていきます。
慣れるまでの期間は猫によってまったく違い、すぐ中で寝るようになる猫もいれば、長い時間がかかる猫もいます。
抱き上げて入れたり、入った瞬間に扉を閉めたりすると、また警戒されやすくなるので、猫が自分から入るのを待つことを優先します。
通院から帰ってきたあとも、すぐに片づけず、扉を開けて元の場所に戻しておくと、「キャリーに入ると病院」という結びつきが弱まっていきます。
中の毛布は、汚れていなければ洗わずにそのまま戻すと、猫のにおいが残って入りやすくなります。

通院の日の朝に、猫がいつものキャリーの中で寝ていたら、そのまま扉を閉めるだけで出かけられます。




