猫は起きている時間の多くを毛づくろいに使い、ざらざらした舌でなめ取った毛の一部を、そのまま飲み込んでいます。
飲み込んだ毛は、便と一緒に出たり、かたまりになって吐き出されたりします。
ブラシで先に抜け毛を取っておけば、猫がなめ取る毛はそのぶん少なくなります。
ただ、売り場に並ぶブラシはスリッカー、ラバー、コーム、獣毛、ピンと名前が多く、見た目だけではどれが何をする道具なのか分かりにくいものです。
名前は、「どの毛を取る道具か」で覚えると、家の猫の毛の長さに合う1本が決めやすくなります。
ピンの硬さや大きさ、使える毛の長さは製品ごとに違うので、使う前には商品の表示と説明書を読んでおいてください。

ブラシの名前は、取る毛で覚える
多くの猫の毛は、外側の長くて少し硬い上毛(うわげ)と、根元近くに生えている綿のような下毛(したげ)の2層になっています。
抜けた下毛は上毛のすき間にたまりやすく、表面をなでただけでは出てきません。
ブラシの種類は、表面の抜け毛を集める、根元の抜け毛をかき出す、もつれを見つける、毛並みを整えるの4つのうち、どれが得意かで分かれます。
| 名前 | 得意なこと | 向く毛 |
|---|---|---|
| ラバーブラシ | 表面の抜け毛を集める | 短毛 |
| スリッカー | 根元の抜け毛をかき出す | 短毛・長毛 |
| コーム | もつれを見つける | 長毛 |
| 獣毛ブラシ | 毛並みを整える | 仕上げ用 |
ラバーブラシは、なでるように使う
ゴムでできた突起で、表面に浮いた抜け毛をからめ取るブラシです。
手のひらでなでる感触に近いので、ブラシに慣れていない猫の1本目にしやすい形です。
短毛の猫なら、ふだんの手入れはこれ1本で足りることも少なくありません。
長毛の猫では根元の毛やもつれまでは届きにくいので、ほかのブラシと組み合わせて使います。
スリッカーは、根元の抜け毛をかき出す
細い針金のピンが、くの字に曲がってびっしり並んでいるブラシです。
毛の中に入り込んで、根元にたまった下毛をかき出すのが得意で、抜け毛が増える時期にいちばん出番が多くなります。
ピンの先は皮膚に当たると傷をつけやすいので、力を入れず、毛の表面をすべらせるように動かしてください。
同じ所を何度もこすると、皮膚が赤くなることがあります。
ピンの先に小さな玉が付いた物や、ピンのやわらかい物は、皮膚への当たりがやさしめです。

コームは、もつれを見つける道具
金属の歯がくしのように並んだ道具で、毛のもつれが始まっていないかを探すのに向いています。
スリッカーでとかしたあとにコームを通し、途中で引っかかる所があれば、そこが絡まり始めている場所です。
歯の間隔が広い側と狭い側がある物なら、広い側で引っかかりを探し、狭い側で仕上げるという使い分けができます。
獣毛ブラシ・ピンブラシ・手袋型
豚毛などの獣毛ブラシは、抜け毛を取るというより、とかし終えた毛並みを整える仕上げ用です。
ピンブラシは先の丸いピンが並んだ物で、長毛の表面をとかすのに使います。
手にはめる手袋型は、なでる動きのまま抜け毛を集められるので、ブラシを見ると逃げる猫に使いやすい形です。
刃のように細かい歯で下毛をすき取るタイプもあります。
すき取るタイプは強く当てると皮膚や毛を傷めやすいので、説明書を読んでから、ごく軽い力で短く使ってください。
短毛か長毛かで、そろえる本数が変わる
1本目を決めるときの分かれ目は、毛の長さです。
短毛ならラバーか獣毛の1本、長毛ならスリッカーとコームの2本が、そろえ方の基本の形になります。
短毛の猫は、1本から
短毛の猫なら、ラバーブラシか獣毛ブラシの1本から使い始められます。
抜け毛が目立つ時期だけスリッカーを足す、という持ち方でも困りません。
ふだんの手入れは週に1〜2回、抜け毛の多い時期は回数を増やす、というのが一つの目安です。
長毛の猫は、スリッカーとコームの2本
長毛の猫は毛がからみやすく、放っておくと根元から固まっていきます。
スリッカーで抜け毛を取り、コームで残ったもつれを見つける、の2本をそろえておくと、毎回の手入れの流れが決まります。
とかす回数は、できれば毎日、少しずつが目安です。
もつれやすいのは、わきの下、内もも、お腹、お尻まわり、首の後ろなど、体がこすれやすく、猫が触られるのを嫌がりやすい所です。
こうした場所は一度に全部とかそうとせず、日を分けて少しずつ進めます。
長毛の猫は、表面だけをとかしても根元のもつれが残ります。
片手で毛を少しずつかき分け、根元が見える所から、毛先に向かってスリッカーを動かすと、下毛まで届きます。
春と秋は、抜け毛が増える
猫の毛は、春と秋の年2回ごろ、季節に合わせて生え替わる時期があります。
この時期は下毛がまとまって抜けるので、ふだんラバーブラシだけの短毛の猫でも、スリッカーを足して回数を増やすと、部屋に舞う毛を減らしやすくなります。
室内で暮らす猫は、季節の境目がはっきりせず、一年を通して少しずつ抜ける子もいます。
抜け毛の量が増えたと感じたら、それが回数を増やす合図と考えると分かりやすくなります。

とかす向きと、ヘッドの大きさ
とかす向きは、毛の流れに沿って、頭から背中、わき腹へが基本です。
毛の流れに逆らって動かすと、猫が嫌がりやすく、皮膚にもピンが当たりやすくなります。
ブラシのヘッドの大きさは、体の大きさと、とかす場所で選びます。
背中のように広い所は大きめのヘッドが早く終わり、顔まわりや足の付け根、子猫の体には小さめのヘッドのほうが当てやすくなります。
持ち手は、手の大きさに合って、力を入れなくても握っていられる物だと、ピンを軽く当てたまま動かしやすくなります。
「毛玉」という言葉が指す2つのもの
ブラシの話でよく出てくる「毛玉」には、2つの意味があります。
1つは、毛が根元からからまり、フェルトのように固まった体の表面のかたまりです。
もう1つは、猫が毛づくろいで飲み込んだ毛を、吐き出したときのかたまりです。
同じ言葉でも、ブラシで手を出せるのは前者の小さなうちだけです。
体の表面にできる毛玉
指でほぐせるくらいの小さなもつれなら、コームの先で外側から少しずつほどいていきます。
根元を指で押さえて、毛が引っぱられないようにしながらほどくと、猫が痛がりにくくなります。
年をとった猫や体の大きな猫は、体をひねって毛づくろいするのが難しくなり、背中の後ろ半分や腰、お尻まわりに毛玉ができやすくなります。
短毛の猫でも、この場所だけは指で毛をかき分けて、根元に固まりがないかを見ておくと、小さなうちに気づけます。
皮膚に近い所で固まった毛玉を、ハサミで切り取ろうとしないでください。
毛玉のすぐ下の皮膚は引っぱられて浮き上がっていることが多く、毛と一緒に皮膚を切ってしまいやすい場所です。
大きく固まった毛玉は、動物病院やトリミングサロンに相談してください。
皮膚が赤い、毛が抜けて地肌が見えている、フケが目立つ、触ると痛がるといった様子があるときは、ブラシを続けずに動物病院へ。
吐き出す毛玉
猫が毛のかたまりを吐くこと自体は、珍しいことではありません。
ブラシで抜け毛を取っておけば飲み込む毛の量は減りますが、ブラシだけで吐かなくなるとは限りません。
吐く回数が増えた、吐こうとしても何も出ない、食欲がない、便が出ていないといった様子があるときは、動物病院に相談してください。
ブラシの替えどき
スリッカーのピンが曲がったり抜けたりしたら、皮膚を引っかきやすくなっているので替えどきです。
ラバーブラシは、ゴムが硬くなったり、ひびが入ったりしてきたら替えます。
コームは歯が1本曲がっているだけでも毛を引っかけるので、使う前に指先で歯の先をなでてみると気づけます。
ピンの奥に抜け毛が残ったままだと、とかす力が落ちるので、使い終わるたびに毛を取り除いておくと、次も同じ感触でとかせます。
ブラシを嫌がる猫への入り方
ブラシを見ただけで逃げる猫は、とかされる時間が長すぎた、痛い所に当たった、という記憶が残っていることがあります。
猫が嫌がる前に終われるくらいの、短い時間から入り直します。
とかす時間帯は、食後や寝起きなど、猫がくつろいで眠そうにしているときが向いています。
遊んで興奮しているときや、窓の外を気にしてそわそわしているときは、手を出さずに待ちます。
2匹以上いる家では、ほかの猫が見ている前より、1匹ずつ静かな場所でのほうが落ち着いてとかさせてくれることがあります。
お腹、しっぽ、足先は触られるのを嫌がる猫が多い場所なので、背中や頬で慣れてから少しずつ広げます。
ブラシの見た目や、毛を引っぱられる感触を怖がる猫には、手袋型やラバーブラシで、なでる延長から入ると受け入れてもらいやすくなります。

長毛の猫でも、一度に全身を終わらせる必要はありません。
きょうは背中、あすはお腹、と場所を日で分けていけば、1回が短くても全身に手が回ります。





